都市夢ーとしむー

第四章/宿りし企み

邪のレール
その1/邪のレール


”うん…。いい感じで持ってるわね。まあ、無意識だろうけど…”

ここ数日、ジュリから受ける波動から、”あっち側”のミカにも微妙に変化を伴ってきたことは伝わっていた。

”この軌道であの女を乗せちゃえば手っ取り早いか…”

ミカはほくそ笑むように呟いた。

...


「室長…、では、影山君を含めPTへは5人ですか…。今の彼女は11人の部下を抱えているから、6人がこっちに戻りますね?」

「ああ…。安達君、それより、影山が持ってきたこの”メンバー表”だよ。彼女に補佐は誰にするのか聞いたら、藤沼葵だと言ってた。それ、そういうことかわかるな?」

「はあ…」

「いいか、影山とナンバー2に就ける藤沼を除いたら、あと3人は男だが、こいつら、去年と今年入社のペーペーだぞ。戦力になるか?いくら若手主体と言ったって…。トップとサブの女二人で仕切る腹なんだろう、影山は」

「…」

...


「アオイ…、仕込む男、決まった?」

「ええ…。でも、なんか…、そんな役目に充てる人選ってのも、気が引けます。あのう…、先輩…、こういう手はやめませんか…?」

アオイは申し訳なさそうに、それこそ遠慮がちにジュリへ諮った。

「ちょっと、アンタ、こっちきなさい!」

ジュリはデスクチェアからアオイの右腕をガチッっと掴むと、勢いよくひっぱって企画室フロアの外へ出て行った。
周りの何人かは、やや異様な二人のやり取りに気づき、何事かという表情を浮かべている…。

...


”バシーン!”

それはいきなりだった。

ジュリは掴んだ腕で放り込むように、アオイを女子トイレに押しこんだあと、アオイの左頬へ思いっきりビンタを見舞ったのだ。
思わずその頬に左手で添えるアオイ…。

俯いていた彼女は、おっかなびっくりで正面に仁王立ちしているジュリをゆっくりと見上げた。

「アオイ!なに甘っちょろいこと言ってんだ!性悪の私に付いてくる覚悟、ホントにあるの?その程度の人選で良心の呵責って、バカじゃない、アンタ!」

「先輩…」

「いい、アオイ…。私はハンパじゃないわ。でも…、もし、躊躇してるんなら、私から離れた方がいい」

ジュリは息を荒げながら、一気に吐き出すようにアオイへきつい言葉を浴びせた。
だが、最後は目を潤ませていた…。






< 49 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop