堕落シンデレラは秘密に同居する。👠

「ごめん。俺が走ったから……」
 蓮翔はそう言うと、隣でしゃがみ、わたしの背中を優しくさする。

 さすらないでって言いたいけど、苦しくてそれどころじゃない……。

「立てる?」

「……」
 わたしは何も答えない。

「おい?」

「…………誰?」  
 わたしはやっとこさ声を絞り出す。

「は?」

 また、は? ですか……。

「さっきの……誰……?」

「さぁ?」

 さぁ? って……。 

「見たことねぇな」
「俺の名前呼んでたけど、たぶん人違いだろ」

 人違いならなんで……。

「なんで……逃げたの…………?」

「逃げてねぇし。雨ヤバかったから走って帰ってきただけだし」

 わたしの両目が潤む。

「おい?」

 ぽたぽた、とわたしの両目から涙が零れ落ちる。

「泣く程苦しいのかよ……?」

 苦しいよ……。
 嘘つく蓮翔が……苦しいよ……。


「…………うそつき」

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