狼の目に涙
目を開けて待っているのは、恥ずかしすぎる。
目を固く閉じて身構えた。
……だけど、一向に唇に触れた感触がない。
これは、私が身構えているところを楽しんでいるんだろう。
『遊ばないでよ。緊張してるのに』
すると、私の腕がずしっと重くなった気がして、砂を踏むような音がザクっとした。
まだ私を弄ぶ気だろうか。
軽く叱ろうと目を開けると、私の腕を掴んだまま隣で寝転んでいる佐々原くん。
額に汗が滲んでいる。
『えっ…佐々原くん?』
頭に浮かんだのは、高熱を出して歩道で倒れ込んでいたあの光景。