私のボディーガード君
「とりあえず座りましょう」

 母に言われてソファに腰を下ろした。

 私と母の前に三田村さんがコーヒーカップを置いてくれた。三田村さんと視線が合う。とても心配そうな目をしている。私がケンカ腰で話しているから心配しているのかも。

 大丈夫だと言う事を伝える為に三田村さんに向かって微笑むと、ハッとしたように視線を逸らされて、気まずくなる。私、余計な事した?

「それでね。ひなちゃん。ここにいる三田村君とセキュリティがしっかりした所に住んで欲しいの」

 はあ? 

 三田村さんと同居?

 何言ってんの!

 こんな無茶苦茶な要求をしてくるなんて、話にならない。

「帰ります」
 すくっと立ち上がると、テーブルの向かい側に座る母が「言う通りにしないと、ひなちゃん、殺されるわよ」と物騒な事を言い出した。

「ご冗談を」
「冗談じゃないのよ。ひなちゃんを殺すって脅されているのよ」

 眉頭を寄せて深刻な表情でこっちを見る母は本気で言っているよう。
 
「なんで私を?」
「正確に言うと私の娘を殺すって脅されているの。恵理もリカコも今はパリにいるから、私の一番近くにいるのはひなちゃんって事になるでしょ?」

 確かに私。

「悪戯じゃないんですか?」
「悪戯だとは思えない内容なの。それで、心配だったからここ数日、三田村君にこっそりとひなちゃんの警護を頼んでいたの。彼、私の所に来る前は警視庁にいてSPをしていたの」

 SP。つまり総理大臣とかの偉い人をボディーガードをする仕事。
 三人の男を軽々と倒すなんてただ者じゃないと思っていたけど、元SPなら当然だ。

 細い体型なのに、三田村さん、かなり強いんだな。
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