パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
いまさらながら私が襲われたあの日、私よりも早く帰った人じゃないと不可能だと気づいた。
だって私がマンションに着いたとき、あの男はすでに部屋の中にいたのだ。

「じゃあ、残りはこのふたりか」

残りのふたつは、鈴木(すずき)さんと櫻井(さくらい)さんだった。
どっちが怪しいかと言われたら、……鈴木さん?

「このふたりはどういう人物なんです?」

東本くんの指が、手帳を叩く。

「鈴木は暗くてぼそぼそと喋る。
そのせいか、営業成績はよくない。
櫻井は明るく、快活だな。
職場でもムードメーカ的なところがある」

「だったら、鈴木が犯人でしょ。
成績不振なのを篠永のせいにし、逆恨みしている」

人物像からは東本くんのように思ってしまいがちだが、そんなの偏見だよね。
きっと鈴木さんには鈴木さんの、いいところだってあるはずだし。

「そういう思い込みと偏見から捜査に失敗することもあるのに、学習しないのかい、君は」

「うっ」

駒木さんにため息をつかれたうえに肩まで竦められ、東本くんは声を詰まらせた。

「もうしばらく観察してみるよ。
危険となれば僕が、花夜乃さんを助けるし」

もう一度名前を確認し、駒木さんがぱたんと手帳を閉じる。
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