パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「花夜乃さんが可愛いのは事実だけど、〝思いつき〟ってなに?
花夜乃さんだっていっぱい考えて出したアイディアなのに。
その人、本気で言ってるの?」

……駒木さんは怒ってくれるんだ。

それであのとき、あんなに惨めだった気持ちが救われた気がした。

「不当に評価されたって、抗議しなよ。
あー、いや、そういう評価をするような会社、辞めちゃいなよ」

「……そう、ですね」

会社を辞めて全部リセットし、一からやり直す。
それは、とても魅力的に思えた。

「なんかもう、疲れちゃいました……」

いくら努力しても、見た目の印象で勝手に評価される。
こんな扱いを受けているのに逆恨みされ、櫻井さんからは襲われた。
なんかもう、なにもかもどうでもいい。

「とりあえず今日はもう、ゆっくり休みなよ。
僕は一緒にいてあげられないのが申し訳ないけど」

「そう、します……」

ゆっくり私の髪を撫でる駒木さんの手が気持ちよくて、意識が溶けていく。

「おやすみ、僕の天使ちゃん」

ぷにっと鼻を押された感触を最後に、私は眠りに落ちた。



「よく、寝た……」

起きたら、ひとりになっていた。

「あ、会社に連絡……」

連絡をせずに休んだから、無断欠勤だと怒られるだろうか。
それにしても今、何時なんだろう?
遮光のカーテンは閉められているので、部屋の中は暗い。

< 187 / 219 >

この作品をシェア

pagetop