6月のシンデレラ
「私は特に2作目が好きです!」
「いいよね、俺も2作目は2回観たよ」
「ほんとですか!」
「――永美里、また敬語になってる」
「あっ…」
興奮してしまって…タメ口で話すのを忘れていた。
「気をつけます、る」
「あははっ」
青人さんは笑うと幼くなって、とてもかわいい。
年上の男性にかわいいは失礼かもしれないけど、かわいいのだから仕方ない。
…舞ちゃん、美容師がチャラいなんて偏見よ。
青人さんはとても紳士的で優しいもの。
「はい、チケット」
「ありがとうございます。お金を…」
「いらないよ。デートなんだからカッコつけさせて」
「あ、ありがとう…」
どうしよう、こんなにドキドキしてしまうのは、私に男性免疫がないだけかしら?
初めてのデートだから、緊張してるだけ?
いつもは一人きりで観る映画。
今日は隣に彼がいる。偽装だけど。
これは偽装恋人の解像度を上げるためのデートなのに、左肩に熱を感じて仕方ない。
世の恋人たちはいつもこんな高難易度ミッションをこなしているというの?
すごすぎるわ…!