6月のシンデレラ
* * *
それから私は、青人さんの提案でしばらく青人さんの家に住まわせてもらうことにした。
今あの家に帰ったら、何を言われるかわかったものじゃないからと。
詳しくは教えてくれなかったけれど、どうやら青人さんには何か考えがあるらしい。
仕事終わりにどこかへ行っているようで、毎日帰りが遅かった。
仕事がない日でもどこかに出かけている。
何をしているのかわからないけど、青人さんを信じると決めたから。
私は、青人さんを信じて待つ。
青人さんがいない間、たまに幼馴染の巧さんが尋ねてくるようになって、何度か話すようになった。
「僕と青人は兄弟みたいに育ったんだ。親同士がめちゃくちゃ仲良くてさ。
お互いの子どもを絶対結婚させる!って言ってたのにどっちも息子だったんだよ」
「そうなんですか。私にも幼馴染がいるんです」
「へー!どんな子?」
「しっかり者で優しくて、私のこといつも心配してくれる姉のような存在です」
「わかるなぁ〜!青人もちょっと抜けてたりして弟みたいな奴だからさぁ」
青人さんも巧さんのことをお調子者の弟だって言っていたけれど。
お互い自分の方が兄だと思っているなんて、面白い。
巧さんはよく喋る人で、色んなことを教えてくれた。
青人さんの学生時代のエピソードも聞けて、得した気分。