6月のシンデレラ


帰宅すると青ざめた母と難しい表情で腕を組む父がいた。
父もさっき帰宅したばかりで、永美里には会っていないらしい。

家族総出で永美里を探した。
巧から連絡を受けた舞子さんも駆け付けてくれたが、心当たりはないらしい。

永美里、どこにいる――?
頼むから、無事でいてくれ……。


「青人!!おじちゃんっ!!大変だ…!!」


息を切らした巧が飛び込んできた。


「今街中で色々聞き込みしてたんだけどっ、昼間に髪の長い女性が知らない男に車に乗せられたところ見たって人がいるんだよ!!」

「なんだって…!」

「それから、これが落ちてたって……」


巧が持ってきたものを見て、一瞬にして血の気が引いた。

水色のリボンが付いたパンプス。
これは俺が永美里にプレゼントした靴だ。

見間違うはずがない、絶対に永美里のだ。


「永美里……っ!!」

「ああ、どうしましょう……っ。私が、羽を伸ばしてなんて言ったから……」

「馬鹿者、お前は悪くない」


両手を震わせて青ざめる母を父が支える。
体に障るので、母は自室で休ませることにした。
巧の両親も来てくれて、おばさんが母に付き添ってくれた。


「すぐに警察に届けるぞ!」


父は厳しい表情で言った。


「警察上層部に掛け合い、すぐに捜索してもらう!」


道場の門下生には現役警察官も多く在籍し、現在はなかなかの地位に就いている人もいる。
父の人脈と人望には頭が上がらない。

結局俺は父に頼らないと何もできないんだ……。


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