【大幅改訂版】女王蜂〜魔女になってしまった花嫁さん
第10話
10月3日の夕方6時過ぎのことであった。

場所は、あいつの実家の居間にて…

9月30日にヤクザたちに殺されたあいつの通夜《つや》が行われていたが、弔問客はまったくいなかった。

重苦しい雰囲気がただよっている中で、義姉《おねえ》が恐ろしい目付きであいつの祭壇に立った。

義姉《おねえ》は、近くにあった金属バットであいつの祭壇をめちゃくちゃに壊した。

(ガシャーン!!)

義姉《おねえ》は、奇声をあげながらめちゃめちゃに暴れまわった。

義父母は、どうすることもできずに震えまくった。

そんな時であった。

Tシャツをまくり上げてへそだしにして、ボブソンのデニムパンツ姿で赤茶色のバッグを持っているアタシがあいつの実家の200メートル手前にやって来た。

その時であった。

「なんなのよキューデン!!キューデンがうちになにしに来たのよ!!」

この時、あいつと同期でキューデン本社に入社した総務の部長が弔問に来た。

総務の部長は、ブチ切れた義姉《おねえ》にかたい棒でボコボコに殴られたあと、呼吸停止〜死亡した。

義姉《おねえ》は、端にいた数人のショッケンの従業員さんたちにも殴るけるの暴行を加えて大ケガを負わせた。

電柱の影に隠れているアタシは、ニ現場を見つめながらニヤニヤした表情でつぶやいた。

ざまあみろ…

アタシにセクハラを加えた部長《バカ》は地獄へ墜《お》ちてトーゼンよ…

義姉《おねえ》から暴行を受けたキューデンの人間も…

あいつとグルになってアタシをリンカンしたから、地獄へ墜《お》ちたのよ…

ブザマね…

それから2時間後であった。

アタシは、JR伊予富田駅から最終の上りの各駅停車《でんしゃ》に乗って逃げ帰った。

帰りの各駅停車《でんしゃ》に乗っているアタシは、なおも嗤《わら》いまくっていた。

10月5日のことであった。

アタシの実家で新たなもめごとが発生した。

アタシの妹で、中学を卒業した直後に家出して行方不明になったみかこ(16歳・無職)がふらりと帰宅した。

妹は、18歳のカレ(塗装工・通信制高校に通っている)と一緒にいた。

妹は、胎内にカレの赤ちゃんを宿していた。

妊娠6ヶ月であった。

妹のカレは、妹と結婚したいと父に伝えた。

それを聞いた父がひどく動揺した。

父は、沼隈さんに電話をかけて助けを求めた。

みかこのカレが寝ぼけたことを言よるけん、殴ってくれ…

父からのSOSを聞いた沼隈さんは、家にやって来た。

沼隈さんは、妹のカレに『寝ぼけたことを言うな!!目を覚ませ!!』と怒鳴りつけたあと、グーでカレシのこめかみを殴った。

この時、妹は両親と沼隈さんに対して『カレに暴力をふるうのだったら、この家を出てゆくわよ!!』とタンカ切ったあと、カレシと一緒に再び家出した。

カレは、出てゆく前に沼隈さんのこめかみをグーで殴って大ケガを負わせた。

父は、ビービービービー泣きながら『花嫁衣装を着たしほこをもう一度みたい…』と言うた。

母は『しほこは、生まれた時から縁がなかったのよ…』とあつかましい声で言うたあと、泣きそうな顔でつぶやいた。

しほこが前厄の時にお見合いをしたのがいかんかった…

しほこは、生まれた時から縁がなかったのよ…

こんなことになるのだったら…

結婚しない方がよかったのよ…

その前に、代理就活《ダイリ》でショッケンを選んで大失敗したのよ…

アタシたち夫婦が結婚したことも…

よくなかった…

アタシ自身は、結婚したい気持ちなんかとっくにうせたわよ!!

前厄(31歳ぐらい)の時にお見合いしたから大失敗したのよ!!

アタシは、結婚するのはイヤ!!

出産育児もイヤ!!

…と言うよりも、男はだーーーーーーーーーーーいきらーーーーーーーーーい!!

アタシは、残りの68年の人生を女王蜂として生きる!!

あいつの家とアタシの実家の親類縁者たち全員を殺人蜂《こどもたち》の毒でぶっ殺してやる!!

(ブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーンブーン!!)

乳房《むね》の奥にできた傷の中にいるスズメバチの家来たちが、1000兆匹まで増えた。

スズメバチの家来たちは、次のフクシュウに備えて、より強い猛毒を補給していた。

アタシの怒りは、破局級の一歩手前の状態になった。

これより、おそろしい悲劇の第二幕が始まった。
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