私を包む,不器用で甘い溺愛。


ただ恋に溺れ,泣いただけなのに。

そんな恋情すらなく,本当にただ遊びたかった人だっているだろうに。

そんな女の子達をこれ以上惨めにしようだなんて,今すぐ廊下から誰かがやってきて甚平をビンタしたって驚かない。



「君ってやつは……本当はひどいやつだったんだな。全部全部自己責任で,根本的な,もっと全てに起因するような存在はそのままで……」

「あら,これだけ話してそう見えた? あぁあと,それ以上言ったらその言葉一言一句違えず有栖に伝えるわよ。まぁ,困るようなこと言ってないんでしょうけど?」



これで最後だと,改めて私は甚平を睨み付けた。

有栖にとって,あたしと榛名くんを悪く言うなんてもっての他。

地雷も地雷。

私は有栖の性質を,誰より理解している。

そして自分に無いものに惹かれたこの男も,本能の部分で本当は分かってる。

だからこうして今,私の前で口をつぐみ棒立ちを決め込んでいる。

榛名くんはどう頑張っても,諸悪の根元以上にはなれないらしい。
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