私を包む,不器用で甘い溺愛。



「じゃあ,なんでありすは……いえ,甚平さんに聞いても」

「惚れてんだと。だから怯えてるお前が安心するまで,お前の嘘に付き合うんだと」



気付けてなかったのは,やっぱり俺たちの方じゃ無いな。

全部お前だ,榛名。

気付きたくないことには気付けないんだ。

自分のしてきたことに罪悪感があるから。

自分の想いが成就するなんて,あんまり有栖が大事になるから。

もう,手遅れのくせに。

まさかの自覚がないと来た。

変な付き合いばっか繰り返した報いだ,ザマーミロ。



「……ぁ,ありすが,そう,言ったんですか?」



いつもの余裕無く,全てで疑った目を向けてくる。

本当じゃなかった時のガードしてんのか。

一つ一つ保険かけてかないと,安心できないのか。

ひねくれてんな。

俺も,こいつも。

呆れた俺が適当に頷くと,数秒後……

あくびをする俺の前で。

ーカッッッッ

「ぁ」

ぼわっと炎の出る勢いで,やつは赤面した。

やってらんねぇと,俺は背を向ける。

なぁんで俺はあんなやつに塩ふってんだろ。

追い払うための塩なら,きっとどこのスーパーにだって売ってるのに。

教室を出る。

その直前で,榛名は俺に声をかけた。

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