私を包む,不器用で甘い溺愛。

エピローグ




放課後。



「甚平くん,ごめんなさい。私から呼んだのに,私の方が遅くって」



今日じゃなくちゃと,すずちゃんに時期に来るであろう榛名くんへの伝言を言付けて,私は甚平くんに話があると声をかけていた。

彼が想いを告げてくれた,人の気配の無いこの場所に。

それなのに,帰りの支度に時間がかかり,またあの日のように甚平くんを待たせている。

あまりの申し訳なさに謝ると,彼は笑って許してくれた。



「有栖。いいんだよ俺は。ちょっと待ってるくらいが,丁度いいんです」

「……ありがとう」



やっぱり優しいのよ,彼は。



「実は俺,何を言われるか分かってます。榛名くんとお付き合いすることになりました。でしょう? あんな騒がしい教室でする話でもねぇもんな」



ぽりぽりと頬をかく彼の目線は,少し斜め上。

壁に持たれたまま,壁に付けた片足をずり……と少し下げる。



「え,ええ。半分,あたりです」
< 88 / 119 >

この作品をシェア

pagetop