まちがいさがし
「みぃつけたっ。」

(へっ?!!)
背後から声がかかり、思わずビクリとする。
(こ、この声って···?!!)

そっと振り返れば、今朝も見たあの男が立っていた。
相変わらずサラサラと綺麗で少し長めの黒髪に、切れ長の瞳はやはり整っていてイケメンだと感じる。


「なっ!!な、なんであなたが!!?」

朝の恐怖感から僅かに震えてしまう。
それをいとも簡単に見破ったのか····。
フッと笑う男。

「こんな所に俺の事で連れてこられたんだろ?怖かったろうに。大丈夫。俺が守ってあげるから。」

突然距離を縮めたかと思うと、そっと抱きしめられる。
あまりの恐怖で体が動かない。
ただ分かるのはなぜか彼から若干 薬品のような匂いもする。

(研究員だから?!危険な研究をしてるサイコパス的な人?!守るって言葉怖すぎるっ!!!この人本気で何しでかすかわかんないっ!!!!)

「7番!!!何してるのっ?!!その人を離しなさいっ!!!」

バタバタと複数の足音と共に前嶋が血相を変えて走って来た。

再びビクリとする光に、男は走って来た前嶋達に怯えていると勘違いしたのだろう。

「大丈夫。安心して。俺がいるよ。
·····守ってあげるからね。」

このワードを聞いた途端、ドキリと心臓がなる。

「だ、ダメよ。あの人達を傷つけては駄目。約束して!」
男の腕に触れそっと囁く。

「光から俺に触れてくれるなんて夢みたいだよ。ありがとぉ!」

「そんなことより、あの人達を傷つけないと約束して!!!」

のんびりおっとり話す男に焦る。
(この人 私が言ってること理解出来てんのかな?!研究員の人達めっちゃ怖い顔でこっち見てるじゃないっ!!!)

あたふたしているのは光だけで、男は光の手の上に自身の手も添えながらニコニコしている。

「優木さん!!こっちへ!」

険しい表情をしたまま手を伸ばす前嶋に、光もすかさず手を伸ばそうとする。

「やめろよ、おばさん。お前いつもそうじゃん。俺らを脅して薬漬けにしたと思うと、言うこと聞かせてえばってるだけだろ?光にも同じことすんのか?
······すぐに死ぬぞ?」

ニヤリと不気味に微笑みながら前嶋へと視線を向ける。
男の発言にビクリと肩を震わし、出した手をダランと下へ降ろした。

(何それ?薬漬け?死ぬって何?!)

頭の中が再び混乱する。
だから薬品の匂いがするのだろうか····。
何がなにやら分からず、一体誰が安全なのかさえ全く分からない。


「優木さん!!騙されないでっ。私たちの所に来るのよ!!」

ジリジリと無意識に後ろに下がってしまう。
本能から来るものか···。
はたまた動揺から出る行動か····。
自分でも訳が分からなかった。


研究員がこっそり持っている注射器が、明らかに男のための鎮静剤だということが素人の光にでも分かった。


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