甘く落ちて、溶けるまで

…ないない、ありえない。



こんな顔だけの猫かぶり男をカッコイイとか、思いたくもない。



もう一度そう自分に言い聞かせて、なんとか口元がニヤけそうになるのを堪えた。



「はぁ〜…久しぶりこんな笑ったかも」



椿くんはやっと落ち着いたのか、そう言いながら目に浮かんだ涙を拭う。



「もうお互い本性バレちゃった事だしさ、隠す必要も無いんじゃない?」



「…まぁ、それはそう…だけど…」



なんだか腑に落ちないのは私だけ?



だって、もしかしたら椿くんがバラすかもしれないんだよ…?



優等生のフリして逆ナンとかする女だって、言いふらして回るかもしれない。



もしそんなことになったら、先生たちだけじゃなくパパにまで伝わっちゃう。



今の私の楽しみが、一切なくなってしまったたら…。



「っ…」



そう考えるだけで、辛くてたまらない。
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