元傾国の悪女は、平凡な今世を熱望する
「……だけどっ! 今からじゃ爆弾の解体は間に合わないぞ! いくらおまえの魔力が強くても、今から一人で全部の爆弾を見つけ出すことなんてできっこ――――」

「そんなの、とっくの昔に終わってるっつーーの!」


 背後から聞こえた声に、わたしの胸は高鳴った。
 振り向かなくても分かる不敵な笑み。わたしを抱き締める力強い腕に目頭が熱くなる。


「殿下……!」

「ザラ、よくやったな!」


 土埃でめちゃくちゃになったわたしの頭を、殿下がわしゃわしゃと撫でる。張り詰めてた気持ちが緩んで、心がほんのりと温かくなった。


「……信じてました、殿下のこと」


 殿下ならきっと、わたしがいなくなったことに気づいてくれる。隠された爆弾に気づいてくれると、そう確信していた。


「当たり前だろ。一人でよく、頑張ったな」


 殿下はそう言って、もう一度わたしのことを力強く抱き締める。


(殿下、それは違います)


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