雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 贅沢づくしのふぐのコース料理も終わり、阿久津が締めの挨拶をして解散となった。

 拓海さんと佐伯リカコは最後まで戻って来なかった。あの後、拓海さんは佐伯リカコを送っていったのかもしれない。

 ため息をつくと、望月先生に元気出せよと言われた。
 それから真剣な顔で忠告された。

「佐伯リカコから雨宮課長を奪うのは骨が折れるぞ」
 世間的には私が佐伯リカコから奪う方になるんだ。落ち込むな。

「もう、かおるさん。中島さんに意地悪を言うのはやめて」
 隣で聞いていた今日子さんが言った。
「今日子、怒るな。親切心で言ってやっているんだ。佐伯リカコは相当、雨宮に想いがあるぞ」
「望月先生、どういう意味ですか?」
「『フラワームーンの願い』の中の佐伯リカコと、今夜、隣で雨宮を見つめていた表情が同じに見えた。あれは好きな男を見る表情だ」

 そんな……。佐伯リカコは妻子持ちの男が好きだったんじゃないの? もしかして、拓海さんに恋人のふりを頼んだのは、本当は拓海さんと恋人になる為の作戦?

 ――拓海はもう私の事、好きじゃないの?

 さっき聞いた言葉が過る。
 あの言葉からは拓海さんへの好意が感じられた。

 考えたくないけど、佐伯リカコは拓海さんが好きなんだ。私はどうすればいいの?
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