雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
 久保田に電話すると怒ったような声がした。
「中島さん、どこにいるんですか! 電波も届かない山奥にでもいるんですか!」
「休日に人がどこにいようといいじゃない。何よ」
「大変です! 雨宮課長と佐伯リカコさんが心中未遂を」
 え……?
「心中未遂?」
「マスコミには流れてませんから。誰にも言わないで下さい。それから2人が入院している病院に来て下さい。マネージャーの森さんが中島さんと話したいそうです。詳しい事はそこで話しますから」

 電話はそこで切れ、メッセージアプリに病院の地図が送られて来た。
 雨宮課長と佐伯リカコが心中未遂? だって拓海さんはここに……。

「奈々ちゃん、どうした?」
 拓海さんがこっちを見る。
 思わず拓海さんの腕を掴んだ。幽霊じゃない。ちゃんと実体がある。

「何?」
 拓海さんが首を傾げる。
「あの、落ち着いて聞いて下さい。佐伯リカコと雨宮課長が心中未遂したそうです」
 眼鏡の奥の瞳が大きく揺れた。
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