雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】
「雨宮さんに沢山、叱られました」
 ソファに座った佐伯リカコが思い出したように口にした。

「覚えていますか? 先週、病室に雨宮さんを残して中島さん、帰ったでしょ? あの後、物凄い勢いで叱られました。あんなに叱られたのは初めて。結婚していた時、雨宮さんは私に怒った事がなかったから、びっくりしました。でも、叱られたおかけで目が覚めました。それで深く反省しました」

 拓海さん、弱々しく泣いていた佐伯リカコを優しく宥める事はせず叱ったんだ。
 お説教が効いて良かった。本当、この方には反省してもらいたい。

「中島さん、雨宮さんは中島さんが一番のようです。私、弱っていて雨宮さんに甘えたくなったけど、突っぱねられました。中島さんを泣かせる事は絶対に出来ないと言って。だから中島さん、心配しないで下さい。彼の気持ちはあなたにしかありませんから」
 私、拓海さんに大事にされているんだ。胸がじーんとする。

「それに、私が心中しかけた事に中島さんは何の責任も感じる必要はありませんから。全て私が悪いんです。雨宮さんに電話したのは私の甘えです。彼なら私を止めてくれる気がして。私がすがる相手は雨宮さんではなく、薬を持って来たあの人だったのに。でも、あの人の気持ちがよくわかりました。あの人、私とは別れるそうです。奥様には敵わなかった。バカですよね。私」

 寂しそうに佐伯リカコが笑った。
 私たちを巻き込んだ恋の結末を聞いて腹が立った。
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