雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】

幻の映画

 今日は私一人で横浜の望月先生の家に向かった。
 昨日、久保田に謝罪をした後、ようやく望月先生の奥様と何があったか話してくれた。
 久保田は奥様を独身だと思い、口説いたそうだ。奥様が怒ったのも納得できる話だった。

 ――一目惚れだったんです。

 そう話す久保田は真剣な目をしていた。

 ――今日子さんは僕にとても優しくしてくれて。毎日、阿久津部長に圧力かけられるし、中島さんの仕事、全部、僕に回ってくるし、僕だって癒されたいんですよ。そんな時にすっぽりと心に今日子さんが心に入りまして……。

 涙ぐみながら話す久保田からは奥様が言ったような、からかった様子は感じられなかった。真剣な気持ちに思える。
 久保田の話を聞いていたら、半分は私の責任のような気がして来た。私も随分と久保田を追い込んだから。

 望月先生が怒っているのは、久保田が奥様を口説こうとした事が原因のような気がした。だから、奥様が久保田を許してくれれば、解決する気がする。

 とにかく、久保田に悪気はなかった事を奥様に話そう。久保田の先輩として、元上司として、この件は何とかしてやりたい。
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