雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】

雨宮課長のマンション

 栗原さんに教えてもらった雨宮課長の自宅は東急東横線の代官山駅から徒歩10分の所にある7階建ての高級感が漂うマンションだった。
 オートロック式のインターホンの前で深呼吸してから、栗原さんに教えてもらった部屋番号を入力。ピンポーン。あれ? 応答がない。留守? 今日は金曜日だし、誰かと約束があるのかもしれない。

 佐伯リカコが頭に浮かぶ。
 雨宮課長にニコッと微笑んで、それから課長も佐伯リカコに微笑んで、美男美女の2人の距離が縮まって、唇が重なって……。

 いやー! そんな所見たくない!
 頭を振って想像をかき消していると、ポンと誰かに肩を掴まれた。

「え」
 振り向くと、息を切らした雨宮課長が立っていた。

「待ったかな? 栗原さんから連絡をもらって急いで帰って来たんだけど」
 コンビニのレジ袋を持った雨宮課長は走って来たようだった。

「いえ。あの、今来た所で。すみません。私のせいで急いで帰って来てくれたんですよね」
「中島さんに早く会いたかったから走って来たんだよ」

 胸がドクンって高鳴る。

 それって……

「ごめん。余計な事言った」
 照れくさそうに雨宮課長が頬をかく。
 課長の言葉が思いがけなくて胸がドキドキする。

 どんな用事か気になって私に早く会いたかったんだ。きっとそう。期待しゃダメ。

「家でいいのかな?」
「はい」
 雨宮課長と一緒に自動ドアを通り、その奥のエレベーターに乗った。
 これから雨宮課長のご自宅に上がるんだと思ったら、さらに鼓動が速くなった。
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