雨宮課長に甘えたい  【コンテスト用】

ピンチ

 映画のフィルムを受け取りに雨宮課長とポールスターを訪ねると、スーツ姿の成瀬君と出くわした。
 向こうも思いがけなかったらしく、驚いたようにこっちを見て、笑った。

「奈々子、俺を追いかけて来てくれたのか?」
 成瀬君が親し気に話しかけてくる。
「まさか。そんな訳ないでしょ!」
「こんな所で君は何をしているんだ」
 成瀬君から遮るように私の前に課長が立つ。
「何って仕事ですよ。では、急ぐので」
 成瀬君が映画館から出て行った。
 ロビーには青白い顔をした藤原さんが立っている。

「藤原さん、あいつに何かされたんですか?」
 雨宮課長が藤原さんに駆け寄った。
「雨宮君、ごめんなさい」
 藤原さんが泣きそうな顔を浮かべる。
「映画のフィルムを渡してしまったの」

 えっ……。
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