ヒーロー

【2022.12.23】


 昔からクリスマスは好きだった。

 自分の『雪乃』という名前も『冬真』という名前も「冬の名前だね」って、2人の距離を近づけてくれたものだった。
 きっと生まれた時から特別だったんだよねって、2人でよく話していた。

 寒いのは得意じゃないけど、雪国で住むのもいいねって、2人で夢を語っていた。

「はぁ」

 駅に着くと大きく息を吐いた。

 12月23日、この日にまたこの街に戻ってくるなんて。

 いつものように神社の前を通り過ぎた。境内に向かって一礼。この場所は、いつも冬真と待ち合わせしていた場所。

 そして、最期の場所。

「……」

 思い出し涙が溢れた。

 今もまだ、私は冬真を大切に想っているよ。


 私の涙と同じタイミングで、ハラハラと雪が舞い落ちてきた。

 一気に寒さが増した気がして、また大きく息を吐く。

 白く昇る息が凍るように、キラキラと輝くダイヤモンドのように見えた。


< 17 / 23 >

この作品をシェア

pagetop