開けずの手紙2ーデジタルー
その2


野坂奈緒子が”その件”を思いつき、和田に相談したのは日曜日の夜だった。
8時近くではあったが、奈緒子は彼には電話で話すこととした。

「…お休みの夜間、すいません。実は昨夜の延長で考えついたことがありましたので、その件でご相談に乗ってもらろうかと思いまして」

彼女は端的に切り出した。

数日前、屋上で生徒間の会話から、北九州での出来事を耳にし、聞き入ってみると、福岡に住む親せきの子を持つ女子生徒から土曜日のニュースやくびれ柳の以外の木といったコアな情報を知り得ていたと…。

『ほう…、さすが女子高校生の情報交換はアンテナが違うな(苦笑)。奈緒子さん、その女子生徒のいとこと接触して話を聞き出す件、こっちからもお願いしますよ』

「すいません。昨日で用が足りずに。さすがに夕べは、まだ頭の整理がつかなかったものですから…。でもその子、昨日のテレビ報道まで予測した情報を得ていたんで、この際、もっと聞きこむべきことがあるのではと思い立ったんです。そこで、明日にも彼女に用件を持ちこもうと思いましたので、和田さんには相談しないわけにはいかず、電話してしまいました(苦笑)」

『ただし奈緒子さん…、いや、野坂先生、そっちの学校の生徒には、周囲にやたら吹聴をされないように、また、あらぬことにその生徒を巻き込まない配慮を、十分願います。まあ、あなたのことだから、釈迦に説法だろうが。はは…』


***


ここで奈緒子はそれに付随したもう一点を和田に諮った。

「それと…、手嶋先生には…」

『ヤツは、九州でああいった状況が起こったことで、胸を痛めてるはずです。手嶋ふが担当学年の生徒でもあるのなら、あなたから事前に話していただけますか。何しろ、”こういった件”で一般生徒に教師から接するのは、極めれデリケートな範疇ですから』

「はい。明日の朝、さっそく…」

『とにかく、またお互いに細かい情報交換は不可欠になった訳だから、何かあればリアルタイムで…。当面、鷹山さんらの九州での首尾は随時報告します』

この夜の二人のケータイによるやり取りは5分程度で終わった。

”始まったわ…。なにはともあれ、今回の震源地を生で掴まないと。事態の進捗は早いような気がするし。まずは鬼島のスピードに追い付かないことには戦いようがないのよ”

故鬼島則人の仕掛けた壮大な呪いのプログラム第2のステージ…。その舞台に乗った奈緒子は、すでに走り出していた…。






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