開けずの手紙2ーデジタルー
パンデミック・イン九州②



奈緒子は、居間の出窓に額で立てかけてある生前の父、丸島友也の遺影と向き合っていた。

”お父さん…、鬼島則人が施した呪いの媒介地だったくびれ柳の木は、私たちがその機能を取り去ったわ。でも、まだ彼の遺した呪いの種は枯れていなかったようよ。私と和田先生はお父さんの願いを成し遂げたつもりだったけど…。私…、このまま見過ごしてていいの…?”

父である丸島は自分の行いから、元教え子だった鬼島則人によってこの世に放った呪いの感染装置が完成されたことで、その拡散を阻止しなければという使命感の下、自らこの世を去った。

その結果、彼の思惑通り、彼自身からスタートした呪いの鎖は高校時代の同級生、横浜在住の自営業者であった水野洋輔どまりで断ち切れた。
しかし、”その流れ”をとっくに想定していたのか、鬼島は丸島以外にもう一人、”開けずの手紙”を死ぬ直前、送り付けていたようだったのだ。


***


父の死から約半年後…。
奈緒子は同じ高校の同僚教師である、手嶋の元赴任校で女子生徒二人が短期間に自殺したことを知り、鬼島の”百夜殺し”の呪いは消滅していなかったと確信する。

奈緒子は、父の教師仲間で、彼と鬼島との事情に深く関わった和田シンゴとともに、超常現象に精通した研究機関アライブの鷹山、そして霊能力者である国上らの共闘によって、自殺した同級生から”開けずの手紙”を受け取った手嶋の元教え子、三浦美咲をその呪いから救い出した。

同時に彼らは、鬼島が呪いを発効させる媒体となっていた”くびれ柳”の大木をも、その機能封殺に至らしめたのだ。

かくして奈緒子と和田は、丸島の懇願した鬼島の遺物たる呪いの伝達回路を断ったと胸をなでおろしていたのだが…。
北九州発の、もはやパンデミック状態を呈している連鎖自殺のスパイラル現象に、その安堵は一気に吹き飛ばされてしまったのだ。

”今頃、和田さんもテレビを見て、私と同じ思いを抱いてることだろう…。私たちは一介の教師だからと、専門の国上さんらに任せて、このまま傍観するだけでいいの!お父さん…”

奈緒子は心の中で、父にこう訴え尋ねずにいられなかった…。





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