君の全部になりたい【完】


「あのっ、小さい頃深山家のみんなと行ったでしょ?あれがすごく楽しかったから、もう一度行きたいなって…」


急いで訂正をする。


これは事実で、一度だけ、深山家と寺門家で遊園地へ出かけたことがあったの。


貸切も何もせず、普通に列に並んで、普通の人と同じように遊園地を楽しんだあの記憶。


「誕生日プレゼントはそんなのでいいのか?」



「うん。それがいいの!」



もう一度、だけでいいから。



「爽、行ってやってくれるか?」


黙って後ろで話を聞いていた爽に、パパが話を振る。


「はい、もちろんです。」


すこし驚いた表情をしてるけど、了承してくれたことにほっと胸を撫で下ろす。



「爽は私服で、その日だけはタメ口で話してね!」



「いや、しかし…」



「私、誕生日なんだから、それくらいいいでしょ?」



こう言う時に使わなきゃ、お嬢様の特権。



「…かしこまりました。」



渋々了承してくれた様子の爽。


それでもいいんだ。執事ってことを忘れて、ただの幼馴染として、ただの好きな人として、接したいの。



最後でいいから。
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