人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 最初からお茶に毒が混入されていたのだろうか。
 しかし、イレーナに症状はない。

「アンジェさま、アンジェさまあっ!」

 泣き叫ぶ侍女と狼狽える使用人たち。
 そして、騎士団長は必死の形相でアンジェに声をかける。

「吐き出してください。アンジェさま」

 とは言ってもアンジェはすでに意識が混濁している。
 それに、いつ毒を飲んだのか不明なのだ。
 イレーナが見ていた限りでは、アンジェは最初にひと口、そして、イレーナと話しているときにひと口お茶を飲んでいた。
 いや、しかしこれが遅効性の毒であれば、イレーナとの茶会の前にすでに毒を飲んでいた可能性もある。

(一体、誰がアンジェさまに毒を?)

 イレーナは混乱する思考をなんとか落ち着かせようと呼吸を整える。
 騎士団長は苦肉の策で、アンジェに口づけた。
 吸い上げて毒を吐き出させようとしているようだ。
 何度か彼が吸っていると、アンジェは突如むせ返し、鮮血を吐いた。

「きゃあああああっ!!!!!」

 侍女たちが悲鳴を上げた。



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