人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

 彼らのひとりがイレーナに質問をする。

「しかしながらイレーナさま、平民には学校に通うような金などないでしょう?」

 イレーナは少しずつ彼らがこの提案に前向きになってくれているのだと思い、明るく答える。

「はい、それについては提案がございます。成績のよい者たちにお金を貸してあげるのです」

 その意見に貴族たちは急に顔色を変えた。

「何だって? 平民に金を貸すだと?」
「馬鹿げている。そこまでして平民に学校を通わせてどうなるというのだ?」

 ヴァルクは何も言わず、ただ全員を見つめて笑みを浮かべている。
 イレーナは毅然とした態度で答える。

「成績が優秀な者には学費免除という制度を整え、学校で学びたいと強く思う者たちにはお金を貸して学ばせて、仕事に就いたら返金してもらうのです」
「そんなことをして踏み倒されたらどうするのですか?」
「そのような事態にならないよう、ルールを作るのです。借金の踏み倒しなんて平民に限らずあることでしょう?」

 イレーナがちらっと目線を向けると貴族たちはばつが悪そうに顔を背けた。
 ヴァルクもアンジェもにこにこしている。
 イレーナはほっと安堵のため息をつく。

(とりあえず乗り切ったかしらね)



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