今はまだ、折れた翼でも
夕方の眩しい光が差し込む教室のドアを開けようとすると、中から会話が聞こえてきた。



「ねえ、あの不良くん。苗字白岩だっけ」

「ああ、それがどうしたの?」



入りづらい様子のようで、そのままドアの前で待つことにする。

早く終わらねえかなと思いながら。



「昨日さ、鳥越さんと一緒に歩いてたじゃん。白岩くんが学校に来てるの一度も見たことないのに、なんで仲いいんだろうね」



ぴくりと、脳が“鳥越”という苗字に反応する。



「あー、それなんかうわさだと、鳥越さんも実は不良で裏では暴力振るってるらしーよ」

「えーまじで?鳥越さんいい子だと思ってたのに。なんか見る目変わっちゃうなー」

「ちょま、花田、声でかいって。誰かが聞いてたらどうするの」


「大丈夫。聞かれてても大丈夫だって。みんな思ってることは一緒だし」

「……まあ、それは一理あるかも」



あはは、と中から聞こえる楽しそうな声とは裏腹に、俺の中では怒りがこみ上げてきた。

いや、怒りを通り越して、絶望だ。そして呆れ。


教室にいるあの二人の女————。



じゃなく。
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