今はまだ、折れた翼でも
「……はい。といっても、一方的ですけど。“渉には関係ない”とだけ言われて切られてしまいました。最初は怒りが湧いてきたんですけど、今考えれば望なりの優しさだったんだと思います。望は、どうしても不器用なところがあるから」



……もし、望くんにとって私が大切であるなら。それは竹林さんだって言えること。

だから。



「あの、竹林さん。ご相談があるのですが」



私は、思い切って言ってみる。

竹林さんは私のほうを向いて「なんでしょう」と首をかしげた。

私は今まであったことを簡潔に話す。そして、ある一つの提案をした。



「……望くんのこと、一緒に探していただけませんでしょうか。あ、厚かましいってことは重々承知の上なんです。でも……」



大切な人に会いたい。その気持ちは、何にも代えられないから。

それに、話によれば竹林さんが望くんと直接会ったのはもう半年以上も前になる。友達にそれだけ会えない気持ちは、私には分からないけど。

でも、“会いたい気持ち”は一緒だと思うから。



「……分かりました。でも、もし会えたときは、まずは鳥越さんが望のもとへ行ってあげてください。僕は友人として二人の幸せを願っていますから」



すると、竹林さんは穏やかに笑った。

私も笑って返事をする。



「はい。……ありがとうございます」


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