今はまだ、折れた翼でも
1 雨滴る金色
自動ドアが開き、私はコンビニを後にする。



「うっ……」



外に出た瞬間、6月の生ぬるい風がすぐそばを通った。

朝、下校途中にお母さんから絆創膏を買ってきてと頼まれ、ついさっき買ったところ。

今日は天気が悪く、今にも雨が降り出しそう。

傘は持っていないし、早く帰らなきゃ。

私は絆創膏を通学バッグにしまって、家の方角へ足を動かす。


こんな日は、下校がつまらなく感じる。

天気はくもりで、霧がかかって視界が開けない。景色がなにも見えなくて、少し退屈なのだ。



「早く家に着かないかな……」



思わずそんなことをポツリとつぶやく。

車がシャーと音を立てながらすぐそばを通過する。ほんとに今日は、霧が濃い。

あのコンビニからこっちのほうは人通りが少ないから、こんな狭まれた視界でも事故に合う可能性は低いんだけど、でも少し怖いなあと感じる。
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