浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】
物音に気が付き振り向いた淳史と目が合う。
「あっちゃん、どうしたの?」と、淳史の肩からひょこっと顔を覗かせた女性は状況を把握したのか、すぐに顔を隠した。


「あ……ね、水姫! は…早かったんだね、仕事終わる…の」


明らかに焦っていて、上手く話せていない淳史。
女性から離れ私のもとへ来ようとする淳史の頬を、思い切り平手打ちした。


「触るな! 気持ち悪い!!」


バッグを手に取り急いで玄関に向かうと、吐き古したサンダルを履いて外へ出る。
ドアノブに手を掛けたとき、部屋の奥から「ねぇあっちゃん、続きしよ?」と言っていたのを、私は聞き逃さなかったけど。


……信じられない。
この状況で続きをねだるなんて、どうかしてる。


慌ててアパートを飛び出したけれど、行く当てもなく急遽駅近くのビジネスホテルに宿泊し、親友であり同期でもある麗華に連絡をしたのは翌朝のこと。
事情を聴いた麗華はすぐに迎えに来てくれ、しばらく麗華のアパートで過ごすことになった。


……もう、あのアパートには戻りたくない。


「一緒に住もうよ」と淳史に言われたときは、本当に嬉しかった。
幸せいっぱいで、一緒に大型ショッピングモールで選んだセミダブルサイズのベッド。

私と愛を確認し合っていたあの場所で、違う女と肌を重ね合っているなんて……。
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