浮気されたら、エリート整形外科医に溺愛されました【完】

はじまり

「水姫ぃぃ!! お帰りー!!!」


夏も終わりに近付き、夕暮れ時には蜩が切なそうに鳴き始める頃。

秘書室のドアを開けるなり、両手を広げながら大声で私の帰りを大歓迎してくれたのは麗華だ。

「ちょ、静かにしてよ」と私にまとわりつく麗華を引き離すと、口を尖らせながら私から離れた。

そんな私たちを見て笑っているのは、桜川先生……望さん。


暑さも少し和らぎつつある9月初旬。
私は、望さんの住むマンションに引っ越しを済ませた。

本当は産まれるギリギリまで実家に居座るつもりだったけれど、望さんが「離れていた時間を少しでも埋めたいから」と、引っ越しすることが決まった。

両親に話すと、そりゃもう人生で1番驚いたような感じだったけれど。
でも誰よりも喜んでくれていて、そのとき父親の涙を初めて見た。

母親の方が驚いていた割に、あっけらかんとしていて。


そんな両親の間に産まれた私は、世界一の幸せ者だ。


「産まれる前に、結婚式を挙げたらどう?」と言う母の提案に全員賛成となり、結婚式の準備も少しずつ進めている。

そして今日、友人スピーチを頼みに麗華のところへ来たわけなんだけれど……。


「ねぇねぇ水姫、新生活はどうなのよー?」

「えっと……まだそんなすぐには慣れないかな」

「それで? 広いの? 部屋は」


どうやら、本題への道のりは長そうだ。
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