偽る恋のはじめかた







・・・・・・今日、土曜日だよね?!



桐生課長から電話が来ることは初めてだったので、驚きで心臓が激しく波打つ。

スマホを手に持ちながら、あたふたとしてしまう、まるで好きな人から電話がきて戸惑う中学生のようだった。


とりあえず、電話に出なきゃ、
トクトクと心臓が一定のリズムで鼓動する。


「・・・・・・は、はい。椎名です」


「あっ、椎名さん?
休みの日にごめんね、なにしてた?」


「家にいましたけど・・・・・・」


「これから、会えないかな?
ちょっとお願いがあって・・・・・・」


「えっ?」


「・・・・・・あっ!俺はまたやってしまった?!
椎名さんの気持ちを考えもせずに、勢いで電話してしまった。普通、休日に上司となんて会いたくないよね。ごめん、今のは忘れてほし・・・・・・」


「行きます!」



気付けば食い気味に力強く返事をしていた。
休みの日に桐生課長に会えるなんて嬉しい。





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