真夏に咲いた奇跡の恋花火
ペコッと会釈して女子トイレに入った。


さっきから一息つく度にぼんやりしてしまって、この通り全く集中できていない。

真夏日続きで疲れているとはいえども、今日で1学期最後の当番。

やりたいって立候補したんだから、最後まで気を引き締めないと。


個室と窓、床の点検をし、シートに記録。男子トイレの状態も書き込み、次に教室のチェックへ。


1の3は、閉まってる。1の2は、電気点いてるからまだ居るな。

1の1は……。



「……さん、皆吉さんっ」



再び肩を叩かれて顔を上げると、目と鼻の先に手島くんの顔があった。



「うわぁぁっ! っな、何?」

「窓、全部閉まってたよって。そんな、化け物に遭遇したみたいに驚かなくても……」

「っだ、だよね。ごめんね!」



少しどもりながら謝罪し、手元に視線を移す。


咄嗟に謝ったけど、あんな目の前に顔があったら驚くに決まってるよ。

女子ならまだしも、男子なんて……。



「どっか具合悪い? きついなら代わろうか?」
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