夕陽を映すあなたの瞳
第十九章 通達と告白
「伊吹、おはよう。お前さ、給与明細見たか?」

週明け、かろうじて会社に辿り着くと、同僚が声をかけてくる。

「おはよう。え、何?なんの話?」
「だから、給与明細。お前、ロイヤルローズカンパニーの件で、すんごい待遇上がってるはずだぞ?見てないのか?」
「見てない。明細はいつも大して気にしてないし」
「えー?!マジかよ。今回はちゃんと見てみろよ。多分、凄い金額振り込まれてると思うぞ」

興味津々で聞いてくる同僚に、はあと気の抜けた返事をしてデスクに向かう。

昴は、おとといの心の言葉が突き刺さり、昨日も1日ぼーっとしたままだった。

「伊吹 心は?」
それは明らかに、自分と結婚して"伊吹 心"になるのはどう?という意味だった。

それに対して心は…
「絶対だめ!それはさすがに考えられない」
と言ったのだ。

心のばっさりとした切り方は、同窓会の時の瑞希を彷彿とさせる。

数年越しの想いを胸に告白した瑞希も、あっけなく心に切られていたっけ。

「はあー」

昴は大きなため息をついて、デスクに突っ伏した。

「おいおい、伊吹!お前、何をそんなにシケた面してんだ?これからロイヤルローズとのでっかい仕事、お前が中心になってやっていくんだからな。気合い入れろよ!」
「はあ」

ため息なのか返事なのか…
もはや昴は、気の抜けたソーダのようだった。

かろうじてパソコンを立ち上げると、先程の同僚の言葉を思い出す。

(給料か…。そう言えばボーナスの金額も見てなかったな)

昴は、給与振込の口座をインターネットバンキングで見てみた。

まず初めに、残高が表示される。

(ん?なんだ、この数字。いち、じゅう、ひゃく、せん、まん…え?じゅうまん、ひゃくまん、せんまん…え?)

「なんだこりゃー!!」

昴は思わず大声を上げて飛び退いた。
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