夕陽を映すあなたの瞳
(私がこんなんじゃダメだ。佐伯さんが抜けてもショーはやらなきゃ)

玄関にしゃがんだままだった心は、ギュッと拳を握り、なんとか気持ちを落ち着かせて立ち上がった。

次の日。
とにかくいつも通りに…と心は自分に言い聞かせて、仕事をこなす。

ショーの前には、クララやルーク達としっかり目を合わせて気持ちを通わせた。

佐伯の代わりにジャンプを飛んだのは、桑田だった。

きっと、あのアクシデントのあと最初に飛ぶのは自分だと決めていたのだろう。

トレーナーの皆が息を呑む中、桑田は綺麗なアーチを描いてわずかな水しぶきと共にプールに飛び込んだ。

わあっ!と客席から歓声が上がり、心もほっと胸をなでおろす。

脳裏に焼き付いていたあの時の光景と恐怖を、一気に吹き消してくれるほど、桑田とルークのジャンプは完璧で美しかった。

「お疲れ様でした」

ショーのあと、駆け寄ってそう声をかけると、桑田はふっと笑って心の頭にポンと手を置いた。

「お疲れさん!」

その笑顔は温かく頼もしかった。
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