タロくんとハナちゃん
「でも、どうして?」
定食が来るまでの間、華子が理一郎に問いかけた。

「は?何が?」

「どうして、誘ってくれたの?」

「なんとなく」

「そっか」

「………」

「………」

「……嘘…」
少しシンと静まり返って、理一郎がポツリと言った。

「え?理一郎…くん?」

「ハナ」

「ん?」

「お前、綺麗になったよな」

「………え!!?/////
ど、どうしたの?きゅ、急に/////
ほんと、らしくないよ?」

戸惑う、華子。
それもそのはず、理一郎はどちらかと言うと毒舌で、華子に対して厳しい。

“トロい!”“優柔不断女!”と、華子をいつも叱っていた。

褒める言葉など、あまり言ったことがないのだ。


「………だよな…らしくないよな、俺」

「う、うん」


それから定食が来て、ゆっくり食べる二人。

「んー!美味しい!」
「だろ?」

「うん!
なんか、懐かしい味がする!」
「フフ…お袋の味?(笑)」

「あー、そうかも(笑)」

微笑み合いながら、理一郎は幸せを感じていた。


この時間が、ずっと続けばいい━━━━━

理一郎は、そんなことを考えていた。



「━━━━理一郎くん!」
「なんだよ!」

「お金!ちゃんと、受け取ってよ!」

「やだよ」

「なんで!?」

「奢るっつってんじゃん!
気持ち良く、奢られろよ!」

「………わかった。
じゃあ、ありがとう!ご馳走様でした!」

そう言って華子が微笑むと、理一郎の大きな手が華子の頭に乗った。

「え………」

華子が思わず、固まる。

「………っあ!わ、わりぃ…!!」

理一郎も無意識だったようで、慌てて手を引っ込めた。

気まずい雰囲気になり、理一郎はヘルメットを華子に投げ渡す。
「え……!?」

受け取れなくて、カシャンと落としてしまう華子。

「おい、ちゃんと取れよ!」
そう言って、拾おうとする理一郎。
「ご、ごめんね!」
華子も、慌てて拾おうとする。

「「━━━━!!!?」」
二人の手が、重なり触れ合う。

お互い、妙に意識しバッと離した。


「……/////」
理一郎は、華子に対して初めての気持ちに戸惑っていた。
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