仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
物語の先にある物

 *

 それから一ヶ月。

 仕事の退職や、海外への移住の準備と毎日忙しい日を過ごしていた。

 それにしても、まさか涼がホストでは無く、デザイナーだったなんて……今でも信じられない。なぜホストのふりをしていたのかと涼に聞くと、笑いながら理由を教えてくれた。ブラックキスとレッドキスは、涼のお兄さんが経営するお店らしい。しかもホストクラブを経営し始めた理由が、妹がホストに行きたいと言い出したからで、変な店に行かれるよりは自分たちの経営する店で、監視がてら見守る方のが安心だと考えたとかで……。どんだけシスコン何だと呆れてしまう。そのホストクラブでホスト達が着用しているスーツは涼がデザインしていて、その納品でよくお店に顔お出していたらしい。

 私と出会った日は、たまたま自分で作ったホスト用の派手なスーツを着て、お店に来ていたということだった。『あんなに泣いている美月に、俺はデザイナーだと言ったら、身分違いだと、引いていただろう?だったらホストの方が良いかなって……』と、あっけらかんとそう言った。

 まあ……確かにそうだろう。

 涼の手がけるブランドは、かなり有名だったことが今になってわかった。海外からオファーが来るほどに……。あの時、有名なデザイナーの涼と言われたら、近づくことは出来なかったに違いない。
 
 こうして涼と両思いになれたのも、自分がホストだと言って気遣ってくれた涼のおかげだと思っている。

 その気遣いに感謝しか無い。


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