仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?
*番外編2*
「美月ちゃんは優秀ね」
「美月ちゃんは手が掛からないわね」
「美月ちゃんは何でも出来るのね」
美月ちゃん、美月ちゃん、美月ちゃん。
みんなお姉ちゃんを褒め称える。
そんな隣で私は智咲ちゃんは顔は良いのに……ねぇ。
などと言われ続けた。
私は容姿だけ。
私だって努力したわよ。
勉強だって頑張った時期があったわよ。
でも……お姉ちゃんにはかなわなかったのよ。
どうやっても追いつけない。
評価されるのはお姉ちゃん。
ちょっとくらい意地悪したって良いじゃ無い。
それがどんどんエスカレートしていった。
お姉ちゃんの彼氏を奪い取った時なんて、最高だった。泣きそうな顔でこちらを見るお姉ちゃんの表情に背中がゾクゾクした。それは麻薬のような依存性……お姉ちゃんの辛そうな顔が見たい。悲痛に歪むか顔が見たい。悲しむ顔が見たい。欲求が増していく。
ああ、楽しい。
心が歪んでいくのを止めることは出来なかった。
そんな私を愛してくれる人はいない。
お姉ちゃんから奪った友達や恋人は、すぐに私に飽きてしまう。
「お前は顔だけだな」
「お前とは性格が会わないな」
「やっぱり美月が良かった」
最後にはやっぱりお姉ちゃん……。
そんな日々を送れば、お姉ちゃんをいじめている自分も精神的に追い込まれる。私の心はもう壊れていたのかもしれない。
精神科の病院の窓から青い空を眺める。
今頃お姉ちゃんは海外で幸せに暮らしているのだろうか。
こんな妹とは離れてせいせいしているだろうか……。
コンコンコンっと病室の扉がノックされ、担当の看護師さんが手紙を持って病室に入ってきた。
「智咲ちゃん、お手紙が届いてたわよ」
「ありがとうございます」
手紙を見て、私は目を見開いた。
お姉ちゃんからの手紙……。
手紙を開くと、そこには綺麗なお姉ちゃん字が並んでいた。
元気にしているか?ご飯は食べているのか?笑っているか?
書かれている内容は私の事ばかり。
あんなにも酷いことをしたのに、お姉ちゃんは私の事を気に掛けてくれる。
涙が止まらなかった。
あの日、お姉ちゃんに謝らなくてはいけなかったのに、出来なかった。
お姉ちゃんに謝りたい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ずっとずっと謝りたかった。
だって、私はお姉ちゃんが大好きだったんだから。
どんなにいじめても凜と前を向く美しさに、格好いいと思った。この人は私のお姉ちゃんなんだと叫びたくなるほどだったのに……。
もっと違う選択肢はあったはずなのに、あたしは最悪の選択をした。
バカだった……。
好きならもっと違うやり方があったのに……。
お姉ちゃんの後を追いかけて、まねをしても出来ないから嫉妬して。お姉ちゃんが羨ましくて、お姉ちゃんの物が欲しくて。
だから嫌われてしまったのに……。
嫌われてしまったと思っていたのに……。
「お姉ちゃん……」
お姉ちゃんが大好きだったことを思い出す。
私も手紙を書こう。
私の思いをいっぱい詰め込んで……。
*番外編2 FIN*