仕事サイボーグな私の恋愛事情~人生は物語のようには上手くいかない。それでも…また恋を始めても良いですか?

 高価そうな食材はスルーして、美月は冷蔵庫の中から卵とベーコンを取り出した。それを熱したフライパンで焼けばベーコンエッグの出来上がりだ。もちろん作るのは二人分。涼が朝ご飯を食べるかは分からないが、一応用意する。冷蔵庫の横に食パンが一斤置いてあったため、美月はそれに包丁を入れる。それを少し厚めに切り、トースターで焼いてみた。するとキッチンにパンが焼ける、甘く香ばしい香りが漂ってきた。

 これ、どこのパン屋さんのパンなんだろう?切ったときはふわもちっとしていて、焼いたらこの匂い……絶対美味しいやつだ。

 ルンルンで朝食の準備をしていると、また後ろから包み込まれるように抱きしめられる。

 涼……?

「わー。良い匂いだね。美味しそう。俺の分も用意してくれたんだ。ありがとう」

「涼……朝ご飯食べるか分からなかったから、一応用意したんだけど、大丈夫だった?」

「うん!朝ご飯食べるよ。すっごく嬉しい」

 後ろから抱きしめられた状態では涼の表情は確認出来ないが、喜んでいることは分かる。それからもう一度、涼が「ありがとう」と言いながら美月の肩に掛かる髪に顔をうずめてきた。

 うわーっ!

 何このラッブラブな恋人同士のような朝のやり取りは!

 美月の心の中はてんやわんやしていたが、何とか冷静を装おう。

「準備が出来たから食べよう」

「うん。俺コーヒー入れるね」

 やっと涼が離れてくれたことで、ホッと息を吐き出した。

 朝から心臓に悪すぎる。








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