モラハラ夫との離婚計画 10年

3,イレギュラー

 たっぷりと土日、博多旅行を満喫してしまった。当たり前のようにセックスをして、部長、井上さんだった呼び名は(こう)くん、ゆうちゃんになっていた。

 夜の営みを思い出して思わずニヤける、モテる男はセックスも上手い、いや、セックスが上手いからモテるのか、どっちでもいいや。

 二日間家を空けた事なんて結婚以来初めて。大量のお土産を抱えて慎重に玄関の鍵を開けた。

「ただいまぁ」

 玄関に靴はない、出かけたか。

 なぜかほっとしてリビングに入るとそこは惨状と化していた。食べっぱなしの寿司に飲みかけの酒、スーツもパジャマも脱ぎっぱなし。

 子供かよ。

 ため息を吐いて片そうとすると、おや。取り皿から箸からすべて2セットある。なるほど。

 金曜夜の機嫌の良さ、つまりお持ち帰りに成功したか。夫婦で暮らす家に持ち帰るな馬鹿が。

 ゴミを捨ててシンクに溜まった食器を洗う、スーツはクリーニング、他は洗濯機に突っ込んで時短で回す。掃除機を掛けて寝室に入ると案の定、布団はめちゃくちゃ。シーツを剥いで新しい物に変える。

 あっという間に元通り。我ながら鮮やか。

 スマートフォンを取り出してアプリを起動させた。監視カメラに録画された映像をチェックする。

 リビングと寝室に1台ずつ隠しカメラが仕込んである。もちろん夫のDV現場を証拠として提出するため。

 金曜日の深夜まで時刻を戻す、リビングに二人の人影。夫と知らない女、察するにえりこ。下品なワンピースが良く似合う。

 普段じゃ考えられないほどテキパキと動く夫、しかしどこに何があるか分からないのか引き出しをメチャクチャに開けている。

 しばらくソファで飲んでたと思ったら、いきなり夫が女に覆い被さる。抵抗する女、強引にキスをせがむ夫。

 やがて女が諦めたように体を許すと、自宅のリビングで他の女とセックスする夫の映像が淡々と流れた。

「キモッ」

 何を考えてるんだこの女は、よくこんな男に抱かれるな。私なら無理。6000万のため。

 同じ頃、おそらく恒ちゃんに抱かれていた私。

「ふっ」

 勝利を確信して動画を保存した。


『くそ野朗の証拠』フォルダにまた一つ有力な武器が加わった。満足。すごく。




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