ピアニストは御曹司の盲愛から逃れられない

 口をとがらしている彼女を想像する。可愛い。どうしたらいいんだろう。

 「ごめん。いいだろ?」

 「はい。よく考えたら私の都合でしたね、ごめんなさい」

 「いいよ。全然。友達だろ、俺たち」

 「……そうでしたっけ」

 「そうだよ」

 「まだ、知り合いです。これから友達になるかもしれませんけど……」

 相変わらず、壁が厚い。そうか、俺はまだ知り合いなのかと落ち込む。俄然やる気が出てきた。
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