麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。
◇婚約破棄
え……。
好きな子が、できた?誰に?
「あの、瑠樹さん。好きな子って……私は? 私のことが好きだから、プロポーズしたんじゃないの……?」
「そ、それは」
「好きじゃ、ないの?」
「……好き、だったよ。英那のこと好きだから付き合っていたし、プロポーズもした。だけど――」
彼が理由を言おうとした時、誰かにその言葉を遮られた。
「私に出会っちゃったからでぇーす!」
高くてキャピキャピしている声色。その人は、私より若い女の人……というか大学生くらいの女の子だった。