麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。

◇夫婦茶碗



 あれから……どうしてだろう。
 なぜ、こんなにくっつかれているのか――それはあの、誘惑してしまった日からだ。




『――英那、ベッド行こうか』


 その言葉の後、お姫様抱っこでベッドに運ばれて……それから、
 だめだ、だめだ。これ以上思い出すと、顔が真っ赤になってしまう!



「英那ちゃん、どうしたの? 体調悪い?」

「いや、何も……何もないです。大丈夫です」


 色々とぼーっとしていたからか宗一郎さんは少し離れて「本当に?」と問いかけた。距離は近いけど……


「あっ、私も着替えてきますね」

「あぁ。じゃあ、待っているよ」


 私は急いで自分の部屋に走って入るとドアを閉めた。


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