麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。

◇聞香始



 
 年が明けてから元旦には私の実家と宗一郎さんの実家に新年のご挨拶に行って、五日には郁美と唯斗さんに挨拶をしに木下家にお邪魔をした。
 もっと早く挨拶をしたかったのだけど郁美は名取だから踊りの披露があるので新年早々新年会の準備などが忙しかったらしい……それは恒例行事なので毎年のことだけど。


「……はぁ、私、大丈夫かな」

「何回ため息を吐いているの? 大丈夫だよ、今日はただ新年の挨拶に香席をするだけなんだから」

「で、でも私、今日初めて正客の方に座るのよ? ……教室とはわけが違うじゃない」


 そう、今日は佐山流の新年会がありその中に『聞香始』というものがある。新年初めての香席会だ。
 それに、國宗の妻として出席なので正客の場所に座ることになっている。宗一郎さんは、子供の頃から参加しているのだろうけど私は初めてだから緊張しかない。本家だけではなくて、分家の方も参加されるって聞いているし……



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