麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。
◇お茶をします
「榊原さん、おはよう。今日も可愛いお着物ね」
「おはようございます、皆さん。ありがとうございます」
教室に通い出して早いことで三ヶ月経った。私は同じ教室に通うおばさまたちととっても仲良しになっていた。
「榊原さん、今日も帰りにお茶して行かない?」
「えっ、また、私一緒でいいんですか?」
「いいに決まってるわよ、私たちもね若い子と交流したいもの。なかなかないしね」
いつもお茶に誘ってくださるのは倉橋紗智子さん。倉橋さんは、六十代の綺麗なおばさまで元々はベリが丘の病院で看護師をされていたそうだ。
今までは仕事一筋だったから今からは趣味を作ってたくさん遊びたいと思ったらしい。香道もその中で見つけた一つなんだとか。
「ずるいわ、倉橋さん。私にも貸してちょうだい」
「橘花さん……」
後ろから来たのは橘花華子さん。お母さんと同じ年代の四十代の方で、ノースエリア出身で専業主婦だと言っていた。
二人とも私のことを娘のように可愛がってくださって、第二第三のお母さんのような存在。
「まぁ、今日は三人で行きましょ」
「そうね、それが楽しいかもしれないわよね」
私もいいか聞かれて大丈夫だと返事をすると「もう帰りの約束ですか?」と後ろから声が聞こえた。
「國宗先生、おはようございます。先生、ヤキモチですか?」
「……そんなことはありません。そんなことはいいですから。始めますよ」
「はーい、よろしくお願いします」