麗しの香道家は、傷心令嬢を甘く溺愛して離さない。

◇お見合い



 あれから一週間。
 私は、お見合いに向けてお兄ちゃんにおねだりをし、間に合うように和裁士に最短で振袖を仕立ててもらった。

 作りすぎじゃないかと思ったけど、やっぱり気分を上げるためにはこれが一番だった。


「お〜よく、似合ってるよ。英那」

「ありがとう、お父さん」


 仕立ててもらったのは私が一目惚れしてしまったもので、肩から裾・袖にかけて白からピンク色のグラデーションに菊や桜が舞い散る様子とリボンが描かれている振袖だ。
 それに白地に艶のあるアイボリーで輪繋ぎに唐花や大きな華紋が織り出された更紗文様で美しく清楚、だけどオシャレ感のある帯。帯揚げを濃いパープルグレー色のレース地にしてあるからリボンのように見せてみた。


「母さんの若い時にそっくりだ」


 お父さんは上機嫌でそう言うと、お母さんとお兄ちゃんも呼んできた。


「あら、可愛い」

「ありがとう、お母さん。髪はね、小夜さんがやってくれたの」

「そうなのね。さすがね、小夜さんは」


 小夜さんは、ヘアセットをするのが得意でいつも成人式やお祭り、卒業式などの着付けの時に髪型をセットをしているからとても上手だ。


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