エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「手を繋いで帰れば寒くないですよ」


「ふふっ、本当ですね。あったかいです。あったかいなぁ」


 真っ白な頬を紅色に染めている菜那はふにゃっとした笑顔を見せた。その笑顔が心臓を突き破ったのは言うまでもない。


「菜那さん、少し酔ってるでしょう?」


「ん? 酔ってなんかないですよ~。でも、本当にあったかいです。こうやって手を繋いで歩くのっていいですね」


 歩きながら菜那は繋いでいる手を持ち上げてふふふ、と小さく笑った。


「蒼司さん、かっこよくて、頭もよくて、すっごく優しくて、お仕事も建築士で素敵なホテルを建設しちゃって本当は私なんか遠い人間だなって思ったんですよね~」


「そう思ってくれてたんですね。でも今は遠くないでしょう?」


「ふふ、そうですね。出会った時から蒼司さんは私のヒーローでした」


「ヒーローって。菜那さん、俺は優しいだけじゃないんですよ?」


 蒼司は菜那の手を少し強く握り、自分の元へ引き寄せた。そして耳元で囁く。


「今すぐに貴女を抱きたいってエロいことも考えているんですから」

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