エリート建築士は傷心した彼女を愛し抜きたい
「蒼司、ちゃんと来たんだな」


 蒼司に話しかけているはずなのに、明らかに視線は菜那の方を向き、身体の隅々まで見られているような視線に緊張で体に無駄な力が入る。


「そりゃあね。来ないと見合いをさせると言ったのは父さんだろう」


「そうだったな。で、そちらのお嬢さんは?」


 蒼司の父親と目が合いゾクリと背筋に寒気が走った。圧倒的な強者のオーラに飲み込まれそうになる。でも、引き受けたからにはしっかりと蒼司の恋人役を演じなくては迷惑をかけてしまう。菜那はピンっと背筋を伸ばし直し、オーラに飲み込まれないよう真っすぐ蒼司の父親を見た。


「初めてお目にかかります。蒼司さんとお付き合いさせていただいている堀川菜那と申します。ご挨拶が遅くなりもうしわけございません」


 菜那は綺麗に背筋を伸ばしながら頭を下げた。脳天に刺さるような視線を感じ、怖さを感じてなかなか頭が上げられない。


「菜那さん、もう頭を上げてください」


「あっ……でも……」


 蒼司の温かな手が菜那の両肩に触れた。菜那を隠すように蒼司は身体の後ろにそっとエスコートする。

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